プロジェクト概要
研究目的
ペルーにおける地震・津波災害の軽減を図るため,地域特性を考慮した総合的な共同研究を実施する. 両国の研究者の強い連携のもとに,地震・津波の災害事例を調査し,地形・標高,地盤種別,建物特性などとの関係を明らかにし, ハザードマップを提示する. また,現実的な建物耐震補強を推進するための構造実験を行う.さらに,空間基盤データに基づいて被害を予測し, 地域減災計画を作成し,ペルーにおける地震・津波減災技術の向上とその社会への実装を進める.
本プロジェクトは(独)科学技術振興機構(JST)と(独)国際協力機構(JICA)の共同事業である 地球規模課題対応国際科学技術協力事業の枠組みもとで実施される. 国内における研究活動はJSTが支援し,ペルーにおける研究活動はペルー側の機関による研究活動も含めてJICAが支援する(地球規模課題対応国際科学技術協力事業パンフレット).
ペルーピスコ地方の標高データと土地利用計画案 |
研究計画
本研究では,減災の視点に立って,研究者間の国際的・学際的な連携のもとに,フィールドに立脚した 実践的研究を推進し,発展途上国社会への減災技術の実装を目指している.@地震動予測と地盤ゾーニング,A津波予測と被害軽減, B建物耐震性の向上,C空間基盤データ構築と被害予測,D地域減災計画 の5つのグループに分けて,密接な連携のもとで, 地域特性を考慮した総合的な共同研究を実施する.
地震動予測と地盤ゾーニング:
リマ首都圏等を対象に,地震観測や微動観測を通じて,これら地域の深部地盤構造を把握するとともに,表層地盤ゾーニングを行う.
また,歴史地震の被害記録や近年の地震記録の分析に基づき,発生が懸念されるプレート境界型巨大地震を設定し,
震源メカニズムを解明し地震動予測を行う.また,地形・地盤構造に着目した斜面災害についても検討する.
津波予測と被害軽減:
ペルーにおける既往の地震津波災害履歴と被害の状況を検証し,発生位置・規模・被害・復興状況をまとめたデータベースを構築する.
次に,地域ごとの津波予測を行うための海底・陸上地形,土地利用,建物のデータを整備し,既往地震や想定地震に基づく津波伝播・浸水シミュレーションを実施する.
この結果に基づき,ペルーにおける津波災害の被害および社会的影響を評価すると同時に,減災対策を立案するための具体的資料と技術基盤を呈示する.
建物の耐震性向上:
ペルーの都市および地方の建物現況調査および過去の地震被害分析等から,都市・地域の建物群の脆弱性を評価し,その耐震化戦略を構築する.
次に,耐震性向上のための補強技術を開発し,その効果を構造実験や数値解析により検証する.
ペルーの建物は,都市部では鉄筋コンクリート造や組積造が,山村部などでは日干しレンガ造などが多く,さらに歴史的建築物や世界遺産も数多いことから,
それぞれの構造様式・用途に応じた耐震性向上を目指す.
空間基盤データ構築と被害予測:
リモートセンシング技術を利用して,建物台帳データを構築するとともに,衛星画像の立体視による広域での標高・地形モデルを構築する.
また,2007年ピスコ地震の前後の衛星画像を用いて被害検出を行い,現地調査結果と比較して被害把握手法の適用性を検証する.
これらのデータを用いて,シナリオ地震に対する被害予測を行う.
地域減災計画:
シナリオ地震に対する被害予測結果にペルーの生活習慣や文化に起因する地域特性を考慮して,ペルーの研究機関と共同で地域減災計画を立案する.
これをもとに,地震・津波の被害軽減を目指した防災行政機関や地域社会への教育・普及活動を行う.